とかげのしっぽぜろ への感想

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評価平均

発想3.6
構成3.1
表現3.4
総合3.7


 さまざまな映画をモチーフにしていることがわかります。すべてはわかりませんし、どれが何ということまで一々申しませんが、おそらく作者の好きなものの詰め合わせなのでしょう。こういったやり方はともすれば観客のあくびを誘う退屈な御披露目会になってしまいがちですが、なぜそのようにモチーフを用いるのかについてとかげの状況から納得できるように作られているので、作品としての体裁は保たれています。

 読んでまず思ったのは、「しっぽはいずれまた生えてくる」ということでした。その通りにお話は終わります。とかげのしっぽが再生することはよく知られているはずなので、これは冒頭で終わり方を提示する方法をあえて取っているのでしょう。
 だとすれば重要なのはそこにいたる過程です。「しっぽ」とはアイデンティティを保証するものであり、それが無い(なぜ無いのかわからない)ということは現状に対する少なからぬ不安であり、その再生を予感させることはわずかな希望を抱かせることです。しかし信じられた希望が叶えられたとき何をもたらすのか、そもそも叶うのか、とかげになったような気持ちで読み進めます。最後にあっけらかんと叶えられた(いつの間にか叶っていた)希望は、もはや取るに足らぬ通過点にすぎませんでした。彼らの旅はこれからはじまるのです。

 なるほど映画への深い愛情が詰め込まれた作品です。作品で扱えるタイトルはどうしても限られてしまいますが、疾走感のあるお話につられて、読者は各々好き勝手に映画のタイトルを思い出してしまいはしなかったでしょうか。少なくともわたしは『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『ストレイト・ストーリー』それから『ベイブ』とか。もっとも『ベイブ』はそれほど好きでもありませんが。
 他にも直接的にはまったく関係がなさそうな作品までおぼろげに浮かんでいますが、タイトルを失念してしまったもの、内容とタイトルが一致しないものも多いのでここまでにしておきましょう。いずれにしてもどれだけ挙げたところでじゅうぶんではないでしょうから。

どれもこれも嬉しい感想ありがとうございます。作品についてというより、蛇足的に本作に関係する映画リストなどつけてみようと思います。お暇なときにでもどうぞ…!

『真夜中のカーボーイ』(1969.シュレシンジャー)
『タイタニック』(1997.キャメロン)
『ゴジラ』(1954.円谷)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985.ゼメキス)
『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015.ミラー)
『ファインディング・ニモ』(2002.スタントン/アンクリッチ)
『インセプション』(2007.ノーラン)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989.トルナトーレ)
『トレインスポッティング』(1996.ボイル)
『俺たちに明日はない』(1967.ペン)
『明日に向かって撃て!』(1969.ロイ・ヒル)

ニモ以降は本編ではっきり言ってません。映画館の火事だの、水槽にダイブして視界が青くなるだの、貨物列車だの書くときにイメージしていた作品です。過去作のサンプリング行為が大好きなので、思わずやってしまいました。楽しかった〜。ありがとうございました。




 映画好きのとかげと犬、しかも尻尾なし同士。なんだか不思議なコンビですが、これ以上なくぴったりなコンビにも思えます。いろいろな映画のパロディが挟まれていて、映画にあまり詳しくなくともいくつかはピンとくるのだから、映画好きな方にはあれもこれもと面白いんじゃないかなと思いました。その中でも知名度の高いタイタニックが中心になっているところに、読み手への気づかいというか、心意気を感じました。水槽に沈むとかげと、北氷洋に沈むディカプリオとでは、だいぶ違いはありますが!
 具体的になにが、ということをいえなくて申し訳ないのですが、どことなく無機質な語り口のように読めてしまって、作品にノリにくかった感じがありました。特に映画というドラマティックな題材を選んでいるために、その食い違いが気になりました。
 とかげのしっぽが生えだして、二匹は向かう、都会へと。これからビスケット屋さんでビスケットの盗み食いは出来るのか、スタジオで新作映画にこっそり出演できるのか。パート2の制作は、興行収入次第でしょうか。

NHKさんのEテレの5分のクレイアニメでトカゲ目線でやってくれないかなーというイメージで読み進めました。コーギーという犬種を見たとき、うん? 犬? これ犬なの? って思った(中学生くらいの頃よ)のを思い出した。コーギーかな、違ったらなんか、恥ずかしい。
しっぽのないとかげが、自分はとかげなのか?と自問自答している様子が印象的でした。

タイタニックのことで喧嘩をするとかげと犬が微笑ましく、同じ趣味を持ついい相棒を得たといった感じ。
クライマックスの、とかげの夢とか、記憶とか、深層心理的な何かが氾濫するようにフラッシュバックしてくる描写はいい効果を生んでると思いました。
小さなとかげを守る犬。ラストの疾走感というか爽快感がすごくよかったです。

ちなみに、自分の中でこの犬のビジュアルはケンケンでした。

最初、とかげと犬? と思いながら読んでいたのに、最後はその友情に引き込まれていました。
様々な映画タイトルが出てくるのも、シーンの移り変わりを体感させていると思いました。

面白い題材を持ってきたな、という印象。
今回思うところあって、ほとんどの作品に星をつけないことにしたのですが、この作品には発想5を差し上げたい感じです。
「機械式」でこのキャラはなかなか出てこないでしょう。

ただ、申し訳ないですが、しっぽを失ったとかげの気持ちになかなか寄り添うことができず、あんまり入り込めなかったです。
一応中盤で「恰好悪い」という発言があるので、可哀想なんだろうなと読み取りはしましたが、どうしても他人事の感がありました。

たぶん、表現方法次第ではとかげに感情移入できる題材だとは思うんです。
「私ならこう書く」というアイデアはいくつかありますが、長くて痛い文章になりそうなので自重します。

ミニマムな視点から感じる壮大な世界が魅力的でした。

内容なのですが、展開が急で状況を読み解くのに少し時間がかかりました。(ぼくもあまり人のことは言えませんが)
読み手が先をなんとなく予想できるような工夫、次を示唆させるような単語を文章に配置すればいいのかなと思いました。

 面白かったです。トカゲと犬の青春の記録みたいな。映画の話題も比較的初心者でも知っていそうなものが語られていたので、わかりやすかったです。犬が走るシーンはものすごくさらりと描かれているのですが、しっかり速さが文字越しに伝わってきました。けっこう説明されていないまま放置されているところとかもあるのですが、読者に察せられるような察せられないような按配で書かれている感じがしました。とりわけ、終盤は一応トカゲの主観に基づけば現実と夢の切り分けができるのですが、作中の出来事の切り替わりの激しさから、どこからどこまでが夢で現実なのか曖昧になっているところがある気がしました。ただ自分はそこの夢か現実が混ざった感じのまま迎えるラストを美しく思い、まさに映画のような幕切れもまた締めくくりにふさわしく感じました。

途中で時間の流れを見失いました。トカゲ目線なので背景の情報が乏しいのが原因でしょうか??
コーギーと思しき犬とトカゲの友情は可愛かったです。

 ごめんなさい。
 しっぽのない者同士であるとかげと犬が一緒に街へ行く……しか分かりませんでした。
 あっけらかんとした犬に対して、ウジウジと考え込むとかげで何となく馬が合っている雰囲気は理解できましたが、それ以上には踏み込めませんでした。
 ただ一つ。「君に小さなしっぽが生えてるよ」という犬のセリフが救いに見えました。

一編の映画を観たような、そんな気持ちになるお話でした。
犬はコーギーかな? 二匹で映画館に忍び込んで映画を観てるさまとか、想像すると可愛いですね。なんだかんだで「タイタニック」が好きなとかげが有名なシーンを真似てみたりして、それが最後に効いてて胸にグッとくるものがありました。

とかげもコーギーもかわいい。

 いろんな映画が登場するが、あまりマニアックなタイトルはない。読者にやさしい。でもよく考えたらどれもけっこう古い映画なので、若い人にはちょっときびしいかもしれない。
 ものすごく好みの作品で、それだけにちょっと後半の畳みかけるような進めかたがざんねん。いぬかわいい。とかげもかわいい。彼らの視点で見る世界は無限に広く、謎と希望に満ちている。
 とかげのしっぽは元からなかったのか。誰にもわからないけれど、あったとしたらきっと虹色をしていた。

もやっとしたものはあるんだけど全体的に雰囲気に好きだし、この終わり方も好き。トカゲというものを知ってはいるがキャラクターとしてあまり馴染みがないからか。もう何回か読み直してみたいところ。
徒歩でマッドマックス、で不覚にも吹いてしまった。

いろいろ情報は多いし、独特の雰囲気があるけどとても読みやすく、なにか残るわけでもなく、その場で消費して終わる作品でした。こういう後味の作品、好きですがね、多分作者の意図は重いのかしらと。情報、多いだけに。軽い読み味のつもりはなかったカモですが。

通常の読書とはまた違った読後感があるような気がします。それはおそらく、文章があえて統一されないまま、あちこち浮遊しているかのような言葉の組み立て方にあるのでしょう。この弛緩した感触は好みです。お話の内容にも作者様の趣味が如何なく発揮されていて、そこもグッドです(こちらの無教養がばれてしまうので、趣味についてこれ以上感想を引き延ばせないのが心残りですが)。ただこうした弛緩した書き方ですと、気が乗ればどこまでも書けてしまうので、どの地点で、またどのように物語を締めるのかが重要になってくると思います。この良い感じに終わっていくラストシーンは、無論良い雰囲気ではあるのですが、そのままスッと何もかも、これまで小説内で積み重ねてきたものが一挙に消えてしまいそうで、いささかもやもやした感覚も残ります。

選ばれた単語とか、それが紡がれていく方向がすこぶるよいんだよね。前の作品の時も思ったけど、ほかの人には真似できない、特別なセンスがあると思うんですよ。
断トツの一番ってわけでもないんだけど、傍に常に置いておきたい。そんな作品。