しっぽのはえた赤ん坊表六 への感想

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評価平均

発想3.2
構成3.7
表現3.3
総合3.5


うーん、どこまでが長老の見た悪夢だったんでしょう。はじめは神の思し召しだと正しく解釈してたのに、人間の感情によって道を違えてしまう。怖いですね。

伝説になぞらえてウルと名付けたとか、天使にしっぽがないと伝え聞いたという描写はあれど、それまで(もそれ以降も)伝説については触れられないし、誰からどういう風に伝え聞いたかということにも言及されない。また、「それが悪魔だということは、毛むくじゃらの黒い体躯、背中の蝙蝠のような翼、腰からいやらしく垂れ下がった尾っぽから知れた」という悪魔のいで立ちから「忌まわしきその姿、あの子らにそっくり!」となるのもピンとこない。
ウルのしっぽは白いはずだし、ノルの翼についてもやはり「見事な白い翼」と形容されている。のちに登場する天使の風貌となら酷似しているというのも頷けるはなしだが、悪魔とは「忌まわしい」という長老の主観以外、どの辺が似ていたのかは文中に記述されている情報からうかがい知ることはできない。
齟齬や矛盾とまではいわないけど、どこか描写が不足しているように感じてならない。それは致命的にはならない程度の、読み手が補完できる微妙なものなので物語として破綻はしてない。でもちょっと不親切で、文章としては不完全に感じてしまう。
そして、(すべてその場の思い付きで判断する浅薄な長老が治める)「村の者にまかせれば、なにも言わずとも、健やかに育ててくれると思った」という天使は、天使のくせにちょっと迂闊だ。

初読は主人公がウルと思ってしまったので、長老に修正するのに労力を取られました。けれど再読すると長老の心の変化を追うことができ、天の介入とそのヒントが与えられながら、現象の意味を深く考えないことの落とし穴が見て取れました。ただ、天の子を育てる具体的な意味が曖昧かなと思います。

分かりやすい話で面白かった。
見た目でなんでも決めちゃうところって愚かよね。
そのくせ、天使とか神とか奇跡とかふわっとしたものを崇拝しちゃう。
童謡っぽさがあるので。娘に読み聞かせてみようかな〜。

 読みやすかったです。長老も人間である以上、過ちというか勘違いはあるとは思いますが、火で焼き殺すような惨い方法を選択するとは思いませんでした。そして姿を見せる悪魔と天使。それだけ天使と悪魔が密接に関わる世界観だったのでしょうね。魔女狩りという言葉をどこか思い出させてくれます。

天使に尻尾。ユニークですね。
ウルとノルの子について触れているところが少なく、どうだったのかなと疑問がのこりました。
赤子に羽と尻尾の両方があったなら、天使に抱くような神々しさは感じなかったのかなとか。

長老がちょっと気の毒でした。善悪を判断するには、彼の知り得ることがあまりにも少なかったので。もちろんそうだからといって、何の罪もないノルとウルを焼き殺していいわけないのですが、天使もちょっとくらい啓示を与えてやればいいのになあと思いました。そしまた、こんなふうに長老に同情するのは、自分もまた長老や村人たちと同じく、平凡で愚かで、おおむね善良なにんげんだからでしょう。

表六さんの前イベント投稿作である「ワンのばか」に通じるテーマを感じました。愚かゆえに善良なのか、善良ゆえに愚かなのか。すがすがしく思い切れた前回と違い、今回は思い切らずに考え続けようと示唆されたように感じました。

 バットエンドですけど雰囲気は悪くないので、これはこれで有りだなと思いましたし、これでいいとも思いました。
 中盤に、オフレコの悪魔と天使のやり取りがあるとかのひっくり返しがあって、終盤前に更にもう一度、人間と悪魔と天使の三つ巴のどんでん返しとかがあると面白かったのではないかと思いました。

第8回の作品同様、格調の高さを感じさせる構成でした。
作品を一読した際に、ほっと思わず息をつかずにはいられない魅力があります。

再読して一点、冒頭に、この村に対する神の恩寵が感じられるキーワード(例えば実り豊かである)、もしくは、この村が試されることとなった背景などが書かれていると、作品が引き締まり、顛末が腑に落ちやすくなるかと感じました。

たいへん楽しく読ませていただきました。この文字数でよく纏められたなあと感心するばかりです。

とても面白いし、お話としてよくまとまっているし、完成度が高くて文句のつけようもないのですが、一つ言わせていただきたい。
天使、お前自分で子育てしなさいよ。
信仰心を試す為にしたことなのでしょうけど、性格悪いですよね、この天使。

こういう終わり方をするなら、長老をもっと邪悪な存在にしたほうがいいんじゃないかと思いました。
他のところは手堅く、手際よく書けていると思いました。

随分と胡散臭い長老である。なるたけ滑稽に読者の目に映じさせようという狙いは伝わるも、あまりに滑稽である。この試みが「長老」なる記号を反転させようという目的から成り立っているのであれば、既存の長老像とでも言うべきイメージを始めに明確に打ち立てるべきだった。ところが本作の長老は冒頭から滑稽である。覆る面白みがこれでは薄れてしまう。初めから終わりまで、この翁は罰されて当然という感じがある。
意味ありげにぼかす表現が多々見つかる。「違う、これはただの夢だ。いや、ひどい悪夢だ!」は効果的だが、「なぜそう言ったのか、長老にもいまだにわからない」は本作の内容にそぐわない感じがする。「しかしどのような罰だったか、それは正確に伝わっていない」は物語の締めとして有効だが、その後がまずい。「一説には~」だけ残して、他はまるごと削ってもよさそうではある。
ただ、全体の構成としては上手いという他ない。特に冒頭が好い。あの一文だけでいろいろなことがくっきりと浮かび上がってくる。ウルとノルの恋愛事情はもう少し増補してもいいかもしれないが、この物語はある意味長老が主人公なので、現状の度合いでいいのかもしれない。冗談交じりで産婆の老女とかつて何かあった的な味覚をどこかに加えても面白そうではある。
物語として、なおさら精錬すべき作品。

どっかで聞いたことあるような、でも聞いたことない、童話のような。展開が長さにとってもちょうどよく、読んでいて心地よかった。
翼のある子は天使のステレオタイプでいいけど、それに対する天使とほど遠い? しっぽのある子というのは、ちょっと弱い感じがした。全身蛍光色くらいのがよかった……と思いきや、いかんせんテーマがしっぽかorz

 いわゆる説話なのですが、それは冒頭から明示されているわけではなく、後半の語り部によって示される形式になっています。
 お話の内容にしてもしっぽの生えた赤ん坊から物語がどのように展開していくのかをなかなか掴ませず、後半の二転三転で畳みかけるように伏線が回収されていて、内容と形式がきれいに構築されています。
 人間は天使を悪魔と取り違え、悪魔に唆された人間は悪魔のようになり、天使は人間に残酷な罰を与える。これは長老たちの勘違い(「なぜそう言ったのか、長老にもいまだにわからない」という部分を深読みすると、事のはじまりから悪魔が介入していた可能性もありますが)が発端なのですが、同時に読者へのミスリードでもあったでしょう。
 またさらりと書かれていますが不確かな伝聞をもとに人間が過ちを犯す、という部分には現代への風刺が込められているようにも感じられました。村人に与えられた罰もまた正確には伝わっていません。

 ただ、上のような読みをすると不満も出てきます。語り部は自ら罰を予想し、それをもとに説教じみた言葉で終わっていますが、これまでの長老や産婆の行動を見てくると、「天使の子を授からないのは、すなわち神に見放された」ことが最も残酷な仕打ちであるという結論を導くにはかなり無理があるように思えます。そもそもから彼らは天使の子を授かるとは思っていなかったでしょうし、天使にもしっぽがあることを知らなかったのは、長い間村に天使の子が(悪魔の子も)産まれてこなかったからであるはずです。

 このことについてのわたしの予想は、ケツ(オチ)にしっくりくるものが見つからず、風刺に寄せすぎてしまったのではないかというものです。
 村人にとって何が「最も残酷な仕打ちか」を語り部には言わせず、最後の段落は「だからこの村にはしっぽのはえた子も翼のはえた子も産まれなくなったのだ」とでもすれば民話的なフラットなエンディングになったと思います。そちらに寄せてほしいわけではありませんが、少なくとも神罰エンディングが似合うお話ではなかったと思います。もっとも冒頭の「七たびあきらめかけた」というところから、このエンディングは必然であったかもしれないのですが。

 冒頭から終わる手前くらいまではかなり好みです。ウルとノルの交流なんかはさらっと書かれていますが、流れ的に感情移入しやすいです。また、テーマによるところも大きいのかもしれませんが、翼よりしっぽが先に提示されることによって、悪魔なんじゃないのかというイメージが読者に浮かびやすくなっているのはうまいと思いました(個人的な好みで言えば、ウルと子供たちが話す部分で出てくる悪魔という言葉は、後半の展開で初めて出てきた方が衝撃的なので別の言葉に言い換えた方が良かった気がします)。長老の内面が次第に醜くなっていくあたりもやや物語の都合に引っ張られてる感はありますが、ウルとノルを燃やそうとする場面に繋がるのに十分な説得力を有しています。オチはいかにも昔話にありそうな感じなのですが、型にはまりすぎていてここまで作り上げてきた物語の勢いを少々削いでしまっている気がします。ただこれは、神から見放された、という言葉にこちらがたいして脅威を抱けなかったからそう思うだけかもしれないです。

この文字数に合ってしっかりまとまっているなぁという印象。第9回をケツから読み始めてきて、良い構成だと思うのはここに来て初めてのことかもしれない。
悪魔の言葉にほいほい乗せられてしまう愚かしさが滑稽です。ウルはともかく、白い翼のウルと蝙蝠の翼の悪魔を同等に並べるなんて、浅はかな。
自分の肌に合った物語かというと好みの話ではなかったけれど、でもやっぱり綺麗に出来上がっているので、ぐぬぬといったところです。

1行目でコーヒー吹きました。コーヒー返して下さい。
情報が過不足無く、読んでいて安心感がありました。面白味も申し分なく、無理なく伏線も回収されていて、流石としか言いようがないです。
一言で言えば、ちょー面白かったです。

> 神聖な手振りをして

というこの表現力がひたすらに羨ましい。
自分の語彙には全くない表現でありながら、老人がどんな動きをしたのかすぐにわかる。はぁー、これはいい表現です。

お話自体は王道。無言で試して、ただの一度の誤りを絶対に許さない天使という名の悪魔の話。