RECREATIONムラサキハルカ への感想

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評価平均

発想3.5
構成3.8
表現3.3
総合3.3


お転婆な姫さん、巫女姿の少女と、女流小説家の三段構成。
個人的に、童謡のような語りの冒頭の姫さんの話が物凄く魅力的だったので、その後の巫女さんの話で少し、さらにその後の女流小説家でだいぶ、興が削がれてしまった。かといって構成的に難があるわけではない。というか、御神酒をわざわざ神酒と描写しているところから、神酒・木の実(蜜柑)・未完でみみかと知れ、その構成が楽しかったです。
さらには、一回読んだだけで程よく理解できる、わかりやすい文章にも魅力がありました。
ただ、初読時、最後の1行は見落としちゃいました。ちょっと改行し過ぎかなと思います。

「神酒」「巫女」「未完」でコンプリートですかね。三番目の和田先生が個人的に好きなキャラクターで、「恥ずかしくなかったら、私の視点で甘ったるい心情描写でも書いてますよ」という台詞には大正時代前後の文豪らしきにおいを感じさせてくれます。原稿を催促する若手編集者との関係も、私も以前自作で試したことがあるのですが、やはり惹かれるものがあります。
そもそも、二番目の部分に出てきた巫女服の少女と三番目の和田先生は同一人物なのか。そう首を傾げてしまいたくなるくらい、この二者には(主に性格に)差があります。彼女自身の言葉を参考にすれば、「当時記者だった夫を神酒の原材料のなる木まで案内」する二番目の物語は自伝小説の一部だということになる。彼女が若い頃は本当にそうだったのか、それともちょっぴり虚構を交えているのか。真実は和田先生本人にしかわかりません。そもそも夫視点ですし。
そしてこの和田先生にしても、実はお姫様の夢の中の創作物であったという可能性が、続く第四の部分において語られることになります(「そしてお姫様は目を覚ましました」)。さらに遡って(=頭から読み直して)二番目の巫女服に立ち戻ってみると、彼女の話していることも虚構なのではないかという疑いもなくはない。現に和田は、彼女の話を聞いて「与太話の類だなという気持ちを強め」ている。
どこが物語の起点なのかを秘匿された、永遠に終わらない/始まらない構造というのは、前回のイベントにおいて3×3×3というペンネームの方が書かれた『僕が言いたいのは延々』に似た傾向を見出すことができます。
あちらでは直線的にどこまでも続いていくのに対し、本作では同じところをぐるぐると回る。名目上の始まりが存在できてしまっていた(=終わりも実は存在できていた)『僕が言いたいのは延々』とは対照的に、どこが始まりでどこが終わりなのかがいよいよわからなくなっている。
メタ的構造のせいで物語やキャラクターが犠牲になっているのが惜しむべき部分ですが(お姫様がわざわざ祠まで神酒を得に行く意味合いが希薄ですし、三番目に出てきた「俺」は極論、登場してもしなくても差し障りのない人物です)、非常に面白く読みました。

入れ子構造になっていて、なおかつ移り変わって行く語り手が子孫であったり、その夫であったりと繋がっていくところが面白いなと思いました。最後にお姫様が目を覚ましたということは、全てが予知夢だったとも考えられますね。
それにしても、将来旦那さんになる人に惚れ薬的な果実を食べさせようとは、策略家じゃないですかね、先生。

全然関係ない話でほんとうに申し訳ないのですが、僕は子どもの頃に見たKEY THE METAL IDOLってOVAのOPがすごく好きで、どんなとこがいいかって言うとわけわかんない不条理カットの連続の最後にヒロインがハッとして歩き出して終わりっていう、今までの全部彼女の頭ん中ってこと??? みたいな、そういうのの描き方としてすごく見事だったんですね。

僕も今回そういうのを書こうとしてて、こねくり回してる間にああなってしまったんですが、この作品はまっすぐゴールに到達されてて羨ましいんだぜ!

この手の「最後の一行に仕掛けを用意するパターン」は私も好きなんですけど、今回は仕掛けの威力が100%発揮できたようには見えないのが正直なところ。仕掛けの結果「そんな意外な一面があったなんて……!」とか「意味がわかると怖い!」とか、そういう感情が喚起されるべきだと思うのですが、この作品は「へえ、なるほど」くらいでした。その差が何なのかを、うまく説明できなくてすみません。

柑橘系のもの(蜜柑的なもの)と未完、未刊をかけているのでしょうか。
どこから夢なのか、全部夢なのか。
白鷺って、蜜柑もげるんだろうか。

 ギミックは叙述的でとても面白いのですが、内容が伴っていない感じがします。っていうか、未完な感じがします。
 今、変換で「みかん」の候補が「未完」と「蜜柑」が出てきました。
 あ、なるほど。そういうことだったのか。
(たぶん、違うと思う)

「味」「実」「未完」で「みみみ」でしょうか。あっちこっちに話が飛ぶようで、ちゃんと繋がっている模様。それが何だか不思議な感覚でした。ラストの全て放り投げるような一文も好きです。

夢の夢の夢みみみみみみみ
ありきてさたりではあるけれども、綺麗にまとまっていました。それ故に少し物足りなかったかな? と、思いました


……という夢だったとさ

お酒を飲んで自分の未来が見えてるお姫様の末裔の巫女さんが自身を題材に小説を書いていて、なんだか照れ照れで都合よく自身の過去を改竄してると思ったらお姫さまが目覚めて――。
らせん状な構造になっているような気もするけど、なんだかこれ言葉選び間違えたせいで構造ズレてて上手く回ってないような、いやいやそもそもそんな複雑じゃないのか、未完だし。

分からん、もう蜜柑食べて寝ちまおう。とはならない面白構造な作品です。
ですがこれ、視点の変化を楽しむ作品なのにちょっとヒントとか少ないというか、解釈のゆとりがあんまりないというか。私の理解力が足りないだけかもしれません。
どことなく詰め切れてないのでは? と思ってしまいました。

 例え未完でも小説を書く人に訴えるものがあったように思います。

「柑橘類らしき実」を原材料に作った神酒なのに、お味は「濃厚なお米のどろりとした味」という。本当はこの果物、神酒の原材料ではないのかしら。それとも数百年のあいだに神酒が別物に変わってしまったのか。生で食べてもおいしい果物が酒として生まれ変わるとき、何か得体の知れない化学変化を起こすのか。

文章に少し荒れている部分があって、構想が固まらないまま書いたのかなという疑念もわきます。でも細かいところを気にしなければ、時制の飛び方が自然で読みやすかったです。おそらくは現代に生きる姫の末裔である和田先生の気まぐれっぷりが、いかにもあの姫の血筋らしい。

こういう夢落ちはアリですね。

先生のところで語り手が女に戻ったところで、ああなるほどそういうことねと私も未来予知して楽しんでいましたが、オチが読めても読めなくても楽しめる。
しかし、姫様にとっては遥か未来(?)の現代社会に生きる自身の末裔を未来視するというのはどういう気分なんだろう。自分の未来だけならともかく。
しかし、本当に食べさせた実が惚れ薬なら、なかなかにホラー。

「刀」でかろうじて日本のお姫様とわかったが、「世話係」とあったので西洋の姫を想像してしまった。お姫様の家系だけど現代ではもうお婿さんとらないのか。それはそれとして……

初読の際ラスト一行の意味が解らず、やられた、という気すらしなかったが、それほど自分が「やられて」いたということであり、巧みな構成だと思う。
最後のほうに空きがあるのだから、序盤、もう少し改行してもいいのかもしれないが、どういう文章を書きたいかの好みの問題なのかもしれない。
小難しい言葉でいえばメタフィクション要素があるが、そんなのあんまり関係なく物語として「綺麗に」オチをつけていて、すごい。

うーん、好きな作品ほど多く語れない。面白かったです。