「甚五郎とお亀」樹莉亜 への感想
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コメント数8
評価平均
発想3.4
構成3.6
表現3.8
総合3.8
ぜろ
2019/09/29 22:18:44
自分は「生き物の形をした、本来動くはずのないものが動く」といった類のものが大好きで、とても楽しく読めました。クレイアニメや人形アニメ、もっと範囲を広げると『トイ・ストーリー』もこれにあたります。
命があるはずのない「モノ」が動くという発想は、自分はどうしても『フランケンシュタイン』を連想してしまい、とてもヨーロッパ的だと思っていたのですが、そんなことないですね。モノに命が宿る発想は日本人も大好きなんだった。とても面白かったです。
命があるはずのない「モノ」が動くという発想は、自分はどうしても『フランケンシュタイン』を連想してしまい、とてもヨーロッパ的だと思っていたのですが、そんなことないですね。モノに命が宿る発想は日本人も大好きなんだった。とても面白かったです。
ぬめぬめ
2019/09/18 22:09:19
彫り物が製作者の甚五郎の前では動かず、あくまでも噂としてしか伝わってこない辺りが妖らしくて良かったです。
ムラサキハルカ
2019/09/17 13:03:15
良くも悪くも「甚五郎、良かったね」というのが正直な感想でした。
甚五郎の地味に見えつつも普通でない半生が綴られる中、お亀との関係性が徐々に徐々に進んでいくところには微笑ましさを覚えました。二人は最終的に妖町に落ち着くわけですが、その際に木彫りの猫を買ってもらうことになったのは、今までの経緯を考えれば最大の救いだった気がしないでもないです。
最後の祝いの宴の場面で参加したのが「半分は妖と半分で、妖憑きの人間だった」さらりと書かれていますが、本作だけで読んだ場合、宴の様子が想像し難いのが少しだけ残念でした。個人的には妖と妖憑きのかたちを描写をして欲しかったです(重要なのは甚五郎とお亀が妖と妖憑きたちの中にいることだという判断なのかもしれませんが)。あと、作中の描写で動物関連の彫物がだいたい動いている中で、お亀に贈った亀の根付けが動く描写がなかったのには、少々肩透かしを食らったような気分になりました。
甚五郎の地味に見えつつも普通でない半生が綴られる中、お亀との関係性が徐々に徐々に進んでいくところには微笑ましさを覚えました。二人は最終的に妖町に落ち着くわけですが、その際に木彫りの猫を買ってもらうことになったのは、今までの経緯を考えれば最大の救いだった気がしないでもないです。
最後の祝いの宴の場面で参加したのが「半分は妖と半分で、妖憑きの人間だった」さらりと書かれていますが、本作だけで読んだ場合、宴の様子が想像し難いのが少しだけ残念でした。個人的には妖と妖憑きのかたちを描写をして欲しかったです(重要なのは甚五郎とお亀が妖と妖憑きたちの中にいることだという判断なのかもしれませんが)。あと、作中の描写で動物関連の彫物がだいたい動いている中で、お亀に贈った亀の根付けが動く描写がなかったのには、少々肩透かしを食らったような気分になりました。
銀
2019/09/10 14:17:29
珍しく実在の人物譚かと思っていたら、見事に妖町に落とし込みましたね。
妖感が抑えめになっていましたが、シリーズの中にはこんな読み口のものがあって良いなと思いました。
妖感が抑えめになっていましたが、シリーズの中にはこんな読み口のものがあって良いなと思いました。
わに
2019/09/10 01:31:29
シリーズにちょくちょく登場していたお亀と甚五郎夫婦。ここにきて彼らがメインのお話しです。
今回の主役である彫物師・甚五郎のモデルは、あの左甚五郎だろうとは想像してたんですが、左甚五郎ってほとんど伝説というか、実在したのかどうかもはっきりしない人だったんですね。実在の人物に後年いろんな尾ひれがついたのだろうと思ってたんですけど、そんな単純な話しではなかった! こうなるともはや、存在そのものが妖かしっぽい。なるほどなるほど。だからこそ、甚五郎はこのシリーズに登場したわけか、と作者さんのこだわりの一面を垣間見る。そしてうなる。
物語は彼の半生、その歩んできた道をかいつまんで、簡潔に淀みなく説明しつつ、ごく自然に彼を妖町へと導いて行きます。けっこう不幸です。そのわりに語りが淡々としているので、悲壮感はありません。甚五郎って、落胆したりするんだけど、基本的に淡泊というかわりと人生諦めてますよね。でもだからこそ、お亀の存在がほわほわとあたたかい。
よく不幸続きの人生を「どん底」とか「暗闇」などと言い、そこに差しのべられる救いを「一条の光」なんて表現します。そしてお亀は確かに明るい性格なのですが、彼女の特性は明るいよりむしろあたたかさだなあと。だから読み終わって最初に浮かんだのは「よかったあ!」ではなく、「これでいいのよね」でした。
名脇役とも言える二人の物語、じんわりと心にしみました。
今回の主役である彫物師・甚五郎のモデルは、あの左甚五郎だろうとは想像してたんですが、左甚五郎ってほとんど伝説というか、実在したのかどうかもはっきりしない人だったんですね。実在の人物に後年いろんな尾ひれがついたのだろうと思ってたんですけど、そんな単純な話しではなかった! こうなるともはや、存在そのものが妖かしっぽい。なるほどなるほど。だからこそ、甚五郎はこのシリーズに登場したわけか、と作者さんのこだわりの一面を垣間見る。そしてうなる。
物語は彼の半生、その歩んできた道をかいつまんで、簡潔に淀みなく説明しつつ、ごく自然に彼を妖町へと導いて行きます。けっこう不幸です。そのわりに語りが淡々としているので、悲壮感はありません。甚五郎って、落胆したりするんだけど、基本的に淡泊というかわりと人生諦めてますよね。でもだからこそ、お亀の存在がほわほわとあたたかい。
よく不幸続きの人生を「どん底」とか「暗闇」などと言い、そこに差しのべられる救いを「一条の光」なんて表現します。そしてお亀は確かに明るい性格なのですが、彼女の特性は明るいよりむしろあたたかさだなあと。だから読み終わって最初に浮かんだのは「よかったあ!」ではなく、「これでいいのよね」でした。
名脇役とも言える二人の物語、じんわりと心にしみました。
哲壱
2019/09/08 11:06:13
「鼠を捕るのという猫の置物」というか「甚五郎が造る彫り物に妖が付く」という肝心なところ(怪奇現象)が、これといった深掘りもされずにサラッと流される。彫り物は突き返され、職を失い土地を追われるなど、甚五郎の境遇を考えると割と気の毒な話のはずなのに一貫して悲壮感はみられない。
しかし結果として、お亀さんという伴侶も得て、その上これ以上ない土地で二人の新生活を始められる。というポジティブな展開のどこに悲壮感が必要なんだともいえる。
その過程での苦境なんか些末なことだぜ!
しかし結果として、お亀さんという伴侶も得て、その上これ以上ない土地で二人の新生活を始められる。というポジティブな展開のどこに悲壮感が必要なんだともいえる。
その過程での苦境なんか些末なことだぜ!
表六
2019/08/28 07:46:24
甚五郎の彫り物の腕の魔性を、甚五郎自身は自覚せず、人づたいに知るということが、この幸福で落ち着いた結末に導いているように読みました。良秀のように自ら魔性に魅いられた者とは違い、むしろ生まれつき仏性を顕す力を持つ紫苑物語の仏師の歩む道のごとき、血のにじむような修練のすえついに魔性と表裏一体の仏力を手にし俗世から離れることとなるある種の人間の悲哀と不可思議を感じました。お亀の情愛によって救われる甚五郎はまさしく仏に出逢うことによって救われたに等しいのでしょうが、彼が仏を彫ったという話の無いところにむしろ魔でも仏でもなく人と表裏一体の妖の道を歩く甚五郎の道が示されているようで、この小説のもつ暖かみと、すんなりと人情に触れる達意の文章とは、やはり表裏一体なのであろうと思います。
竜胆
2019/08/26 18:18:57
ばくはつしr
水仙を彫れば咲き、猫を彫れば鼠をとってくる。ぶっしのぶっしんは、彫った仏を戦わせるというぶっ飛んだ設定だったけど、そこまではなくとも、甚五郎が美少女フィギュアを彫ったら何が起こるのだろう。目覚ましかな。
水仙を彫れば咲き、猫を彫れば鼠をとってくる。ぶっしのぶっしんは、彫った仏を戦わせるというぶっ飛んだ設定だったけど、そこまではなくとも、甚五郎が美少女フィギュアを彫ったら何が起こるのだろう。目覚ましかな。