女子高生の憂鬱

「ここまでおれの我が儘に付き合ってくれたこと、感謝しているよT袋」
「なに水臭いこと言ってんのさK林。おれとお前の仲じゃないか」
「長年追い求めてきた謎の核心に、今まさに迫っていると思うとついな。それにしても今まで本当にいろんなことがあった」
「だな。何度も行き詰まりかけた。今こうして謎が解き明かされようとしていること。未だに信じられないぜ」
「T袋が闇の組織に連れ去られた時なんて、編集長と、本気でこの企画、いや、KMRを終了しようと話してたんだぜ」
「はは、KMR……かきあげミステリー調査班解体か。そんな危険な橋も渡ってきたっけな。K林だって文書の解読に手こずって、何週間もふさぎこんでたじゃないか。あんときゃ池Pと、ああここまでなんだなって話したもんさ」
「そう言えば池Pは遅いな。あいつに頼んでいた物が届けば、最後のピースが嵌るはずなんだ」
「いよいよなんだな」
「ああ、いよいよだ。おれの仮説が正しければ、いよいよ女子高生の魅力の謎が解き明かされる」
「それにしてもK林、よくそんな大胆な仮説を思いついたな。絶対領域にこそ、全ての女子高生の魅力が集約されている……だっけか。なるほど確かに、絶対的な領域が、圧倒的に他者を隔絶するわけだな。すげーな絶対領域」
「……T袋、お前絶対領域をちゃんと理解できてないだろ」
「すまん。なんとなくすげーってのは分かるんだけどな」
「おれが入手した信用できる情報筋(Wikipedia)によると、スカート、ショートパンツなどのボトムスとニーソックス(サイハイソックス)を着用した際にできるボトムスとソックスの間の太ももの素肌が露出した部分を指す萌え用語のことだ」
「なんかおれには難しくてよくわかんねーわ」
「心配するな。T袋にも分かり易いように、具体的に実証してやるさ。ええい、池Pはまだか」
 ガチャ
「遅いぞ池P! 例の物は持ってきたか?」
「こ……これは危険……だ……。決して……使っては……ならな……ガク」
「おい、池Pどうした? T袋、水を持ってきてくれ」
「はいよ」
「スペシャルサンクス! 池P、さあこれを飲んで落ち着くんだ」
「んぐ、んぐ、はあはあ、K林さん、僕はパンドラの箱を開けてしまったのかもしれない」
「いったいなにがあったんだ」
「僕はちょっと試そうとしただけなんです。ちょっと箱を開けて、ちょっと覗きこんだ……。そこにはえも言われぬ、まるで桃源郷のような世界が……」
「おい池P! しっかりしろ」
「ガクガクガクガク……く、来るな! なぜ僕を追いかけるんだ? 黒い服を着た銃を持った男たちが……」
「気絶しちまった。T袋、仕方ない、二人だけで実証実験を開始しよう」
「って、K林おまえ本気か? 池Pの取り乱しようを見て、なお実験をするっていうのか? いや、おれは降りるぜ。今回は洒落じゃ済まない予感がするんだ」
「いまさら何を言ってるんだT袋。おれたちの今までの苦労がやっと、やっと報われるんだぞ。考え直せT袋」
「分かってる。分かってるんだよK林。だがなあ、池Pの姿を見ておれはさっきから震えが止まらないんだ。絶対ヤバいことがおこるって。今回は手を引こうK林」
「確かにな。おれだってぶるっちまって今すぐにでも逃げ出したい気分さ。だがな、男にはやらなきゃならない時ってのがあるんだぜ。そうだろうT袋」
「それはいつだって勝ち続けてきた男の理屈さ。K林にはおれの気持ちなんて分からねえさ」
「そうか、ならばいいさ。真の探求者はおれ一人だったという訳か。ならばこの、最先端物取扱い機関(Amazon)から入手した超高倍率双眼鏡で、じっくりと絶対領域を観察してやるぜ。お前たちのぶんまでな」
 ガチャ
「ひ、H介編集長、なぜここへ」
「今編集部へ警察が来てな、池Pのことをいろいろ聴かれたよ」
「そんなことを聞いてるんじゃない。なぜH介編集長はおれたちがここにいるって分かったんですか」
「ふっ、若いなK林。編集部から徒歩圏内にある、制服がお洒落だと噂の女子高。その正門の向かいに位置する喫茶店の窓際席は、昔から私の特等席でね。お前たちならきっとこの場所に辿り着くだろうと踏んでいたよ」
「ま、まさかおれを止めに来たんじゃないでしょうね。説得しても無駄ですよ。おれは一人でも、女子高生の魅力の謎を解いてみせますよ。ああ、一人でだってやってやるさ」
「落ち着くんだK林。私はKMRの長として、謎の解明より、お前たちの安全を最優先に考えなければならない立場にあるんだ。ここは大人になろうK林」
「いやだ! はあはあ……おれは……、はあはあ……、この超高倍率双眼鏡で……、はあはあ……、女子高生の……、はあはあ……、絶対領域を隅々まで満喫したいんだ!」
「いい加減目を覚ませK林!」
「て……T袋……」
「だいたいおまえってやつはいつもそうさ。勝手で、自分の欲求を満たしたいだけのただの変態じゃないか」
「そ、それは言い過ぎだぞT袋」
「H介編集長だって御同類でしょう。おれはね、別に女子高生にそれほど拘ってなんかないっすよ。お姉さんだって好きだし、熟女だっていけるくちさ。それに……それに幼女だって……」
「それ以上言うなT袋!」
「ははは。おまえが一番変態じゃないか」
「だまれ、ひ……H介編集長!」
「う……うーん」
「池P、気がついたのか」
「話は聞かせてもらいましたよ。K林さん、僕も最後の謎に挑ませてくれるんですよね」
「池Pおまえ……。さっきまであんなに震え上がってたくせにかっこつけんなよ」
「僕はねT袋さん、打たれればうたれるほどにいいぃ良いいーーーー」
「やばい、ものほんだ」
プルルルル、プルルルル
「はいK林。ああ、Gさんか、新しい情報? いや、それはもういいんだ。今まさに謎が解明される瞬間さ。来週の『週刊少年かきあげ!』楽しみにしていてくれよ。え、なに? とある確かな情報筋(Wikipedia)によると……!!」
「池Pも変態だったか」
「変態大王にいわれたくないですよ」
「なんだと! って、K林、電話、情報屋のGさんだったんだろ。何を今更って感じだよなー。もう謎が解明されようってのに情報もなにもないっての(ホジホジ)」
「み、みんな。落ち着いて聞いてくれ。昔、そう、三十年も前の話だ。女子高生のスカートは今よりもはるかに長く、時に地面に引きずって歩いていたらしい」
「何を言いだすかと思えばK林。そんな絶対領域も無いような女子高生に、魅力なんかあるわけないだろ」
「いや、T袋よ、驚くことに当時も女子高生は特別な存在であったらしい」
「じゃ、じゃあ絶対領域の法則はどうなるんです?」
「いいところに気づいたな池P。そう、実証前に仮説は崩れ去った! ああ……お、おれの今までの努力はいったいなんだったんだ。も、もうだめぽ」
「甘ったれるなK林。おまえは今までだって何度も立ち上がってきたのだろう。おれが編集長でいるうちは、全面的にバックアップしてやる。思い切っていけ!」
「そうですよK林さん」
「だな。編集長は止めに来たんじゃなかったかってことは一先ず置いといて、おれたちだってついてるぜ」
「ひ……H介編集長。おまえたち」
「じゃあ双眼鏡人数分あるんで、みんなで謎に立ち向かっていきましょう」
「だな。それでこそおれたちKMRさ」
「ははははははははははwwww」

そして女子高生の受難は続く 完

感想を投稿する
ログインする※ログインしなくてもコメントできます!
コメントするときにログインしていると、マイページから自分が付けたコメントの一覧を閲覧することができます。

名前は省略可。省略した場合は「匿名希望」になります。

感想の投稿には利用規約への同意が必要です。