誤訳

ヘビー・ボンダーソン

 さて、夜が明けると、ロン毛、ドレッドヘアたち全員は、イエヌを死刑にするために協議した。
 それから、イエヌを縛って連れ出し、総督アフロに引き渡した。
 アフロは、彼らがねたみからイエヌを引き渡したことに気づいていたが、七三分けの群衆はイエヌを死刑にするよう強く求めていた。
 アフロは、自分では手の下しようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、七三分けたちの目の前で水を取り寄せ、手を洗って、言った。
「この人の髪について、私には責任がない。自分たちで始末するがよい。」
 すると、七三分けたちはみな答えて言った。
「その人の髪は、私たちや子どもたちの上にかかってもいい。」
 そこで、アフロはイエヌの髪を軽くむしってから、十字架につけるために引き渡した。

 こうして、アフロの兵士たちは、イエヌを十字架につけてから、イエヌの髪を剃り落とし、そこにすわって、イエヌの見張りをした。
 また、イエヌの禿げた頭の上には、「これは薄毛の救い主イエヌである。」と書いた罪状書きを掲げた。
 そのとき、イエヌといっしょに、ふたりの薄毛が、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。
 道を行く人々は、これ見よがしに自分の七三分けの前髪を振りながらイエヌをののしって言った。
「死んだ毛根を三日で蘇らせる人よ。もし、髪の子なら、自分を救ってみろ。頭髪を生やしてみせろ。」
 同じように、ロン毛たちもテクノカット、ドレッドヘアたちといっしょになって、イエヌをあざけって言った。
「彼は他人を救ったが、自分は救えない。薄毛の救い主なら、今、自分の頭髪を生やしてもらおうか。そうしたら、われわれは信じるから。
 彼は髪により頼んでいる。もし髪のお気に入りなら、いま救っていただくがいい。『わたしは髪の子だ。』と言っているのだから。」
 イエヌといっしょに十字架につけられた薄毛どもは、その場で漫才を始め、後にM-1グランプリで優勝した。
 さて、十二時から、全地が暗くなって、三時まで続いた。
 三時ごろ、イエヌは大声で、「ゼロ、ゼロ、クロ、グロ」と叫ばれた。これは、「わが髪、わが髪。どうしてわたしをお見捨てになったのですか。」という意味である。
 すると、それを聞いて、そこに立っていた人々のうち、ある人たちは、「この人はリアップを求めている。」と言った。
 また、彼らのひとりがすぐ走って行って、海綿を取り、そこに薬用ポリピュアEXを含ませて、葦の棒につけ、イエヌに飲ませようとした。
 ほかの者たちは、「私たちは水谷豊が助けに来るかどうか見ることとしよう。」と言った。
 そのとき、イエヌはもう一度大声で叫んで、息を引き取られた。
 すると、見よ。人々の髪が先端から根本まで真っ二つの枝毛になった。そして、頭皮が揺れ動き、痒みが走り、カツラの者は少しズレた。
 百人隊長および彼といっしょにイエヌの見張りをしていた人々は、頭皮の振動やいろいろの出来事を見て、非常な恐れを感じ、「この方はまことに髪の子であった。」と言った。
 イエヌのからだは、イエヌの弟子となっていた石頭のコンケーブという人が引き取った。
 コンケーブはイエヌをきれいな亜麻布に包み、岩を掘って造った新しい墓に納めた。入り口には大きな石をころがしかけて帰った。

 さて、次の日、すなわち備えの日の翌日、ロン毛、リーゼントたちはアフロのところに集まって、こう言った。
「閣下。あの、人をだます男がまだ生きていたとき、『自分の毛根は三日の後(のち)によみがえる。』と言っていたのを思い出しました。
 ですから、三日目まで墓の番をするように命じてください。そうでないと、弟子たちが来て、彼を盗み出して『毛根がよみがえった。』と民衆に言うかもしれません。そうなると、この惑わしのほうが、前のばあいより、もっとひどいことになります。」
 アフロは「天パを出してやるから、行ってできるだけの番をさせるがよい。」と彼らに言った。
 そこで、彼らは行って、石に封印をし、天パが墓の番をした。

 さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方、ツンデレのツインテールと、ほかのツインテールが墓を見に来た。
 すると、地は巨大な影に覆われた。それは、天地万物の創造者、全知全能の父、万軍の主、大いなる髪である空飛ぶスパゲッティ・モンスターが天から降りて来て、空中に漂っていたからである。
 その目は慈愛に満ちあふれ、触手にはパスタのようにコシがあった。
 天パたちは、スパゲッティ・モンスターを見て恐ろしさのあまり震え上がり、薄毛のようになった。
 すると、スパゲッティ・モンスターはツインテールたちに言った。
「怖がらなくていいスパ。君たちは、うちの子のイエヌを捜しているスパね? ここにはもういないスパ。イエヌの奴、もう、毛根がよみがったから。発毛して、さっさと行っちゃったから。墓の中、見たらわかると思うけども。
 だから急いで、お弟子たちに色々と知らせてあげてほしいスパ。イエヌがよみがえったこと、そして、君たちより先に美容室に行ってるから、そこに行けば会えるということ。会えば、あとはイエヌから話があるはずスパ。よろしく頼むスパ。」
 そこで、ツインテールたちは、恐ろしくはあったが大喜びで、急いで墓を離れ、弟子たちにLINEを送った。
 すると、イエヌが彼女たちに出会って、「悩み無用。」と言われた。彼女たちは近寄って、イエヌに髪があるのを確認して拝んだ。その目は慈愛に満ちあふれ、髪にはパスタのようにコシがあった。

 十一人の弟子たちは、原宿に行って、指示された美容室に入った。
 そして、イエヌにお会いしたとき、彼らは礼拝した。しかし、ある者は疑った。
 イエヌは近づいて来て、彼らにこう言われた。
「全世界に出て行き、すべての薄毛たちに福音を宣べ伝えなさい。信じる薄毛は発毛します。友達ならあたりまえ。しかし、信じない薄毛はアルシンドになっちゃいます。
 さあ立ち上がりなさい、髪の毛たちよ。わたしは、薄毛業界の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。」
 主イエヌは、彼らにこう話されて後、天に上げられて髪の右の座につかれた。

 そこで、彼らは出て行って、至る所でコマーシャルを打った。主は彼らとともに働き、みことばに伴う発毛実感をもって、みことばを確かなものとされた。ラーメン。


〔読解のための手引き〕
https://ja.wikipedia.org/wiki/水谷豊
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルシンド・サルトーリ
https://ja.wikipedia.org/wiki/空飛ぶスパゲッティ・モンスター教

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