アナログゲーム紹介コラム -インサイダー・ゲーム-

水市

 私の好きなアナログゲームに『インサイダー・ゲーム』というものがあります。
 株式会社オインクゲームズが二〇一六年六月に発売したゲームで、発売直後から人気タイトルになった感があり、多くのゲーム会の会場でプレイされました。ワンプレイの所要時間が十分程度で繰り返し遊びやすいということもあって、私は既に二、三十戦程度経験しました。
 ゲームの内容は、前半と後半で様相が大きく変わるのですが、

・前半では、皆で協力してお題当てゲームをする。
・後半では、皆の中にひとりだけ混じっている「インサイダー」をつきとめる。

 というものです。

 プレイ人数は4~8名で、最初にプレイヤーの人数と同じ枚数の「役割カード」が用意されます。内訳は、マスター1枚、インサイダー1枚、残りのカードは庶民です。
 それらのカードをシャッフルして各プレイヤーに配り、ひとりひとりの「役割」を決定します。マスターだけは名乗り出て、インサイダーと庶民は自分の役割を明かしません。
 世界観としては、インサイダーは情報を不正に握っている悪者で、マスターと庶民はインサイダーを逮捕するように動きます。インサイダーは逮捕されないように振る舞う必要があります。アナログゲームに慣れている人には「正体隠匿系のゲームです」と説明したほうが早いかもしれません。「インサイダー対その他全員」という構図です。
 ただし、前半では全員が協力する必要があります。
 前半で行われる「お題当てゲーム」では、お題がランダムで決定され、開始前にマスターとインサイダーだけがお題を確認します。お題を決めるためのカードがあり、「辞書」「帽子」といった日常的なものから、「熱」「歴史」のような抽象度の高いものまで、252種類のお題が用意されています。
 お題を通知する手順は以下の通りで、マスターが行動を宣言しながら進めます。

①マスター以外の全員が目を閉じる。
②マスターがカードを開き、お題を確認する。このとき、マスターが知らない単語がお題になった場合はカードを引き直す。
③カードを開いて置いたまま、マスターが目を閉じる。
④インサイダーが目を開け、お題を確認し、目を閉じる。
⑤マスターが目を開け、カードを伏せてお題を隠す。
⑥全員が目を開ける。

 この手順で「マスターとインサイダーだけがお題を知っている」「インサイダーの正体は誰も知らない」という環境が整い、準備が完了します。
 マスターが五分間の砂時計をひっくり返し、ゲームが始まります。
 庶民とインサイダーは、マスターが知るお題を五分以内に突き止めなくてはなりません。そのために使える手段は、「はい」か「いいえ」で答えられる質問のみです。
「それは生き物ですか?」「食べ物ですか?」「コンビニで買えますか?」などなど、マスターに対して自由に質問していきます。マスターはそれらに「はい」「いいえ」「わからない(どちらとも言えない)」で回答します。ある年齢層の人には「二十の扉の、質問数制限がないやつです」と説明すると伝わりやすいかもしれません。
 例えば、お題が「野球」の時に「それは野球ですか?」という質問が出た場合、マスターは「正解!」と宣言し、前半のお題当てゲームは終了して後半に移行します。
 五分以内に正解が出なかったら、そこでゲームオーバー。全員の敗北となります。
 インサイダーは最初からお題を知っているので、言おうと思えばいきなり正解を言うこともできますが、そうしてしまうと自分がインサイダーであることがばれてしまうので、カモフラージュして質問する必要があります。

 正解が出た時点で(砂時計が途中でも)砂時計をひっくり返し、後半の「インサイダー探し」をスタートさせます。砂が落ちきるまで議論を行い、誰がインサイダーだと思うかを話し合います。前半で唐突に話題を変えた人や、あまり質問をせず黙っていた人が疑われやすいです。
 話し合いが終わったら、インサイダーを捕まえる裁判のフェーズに移ります。紙幅の都合上、詳細な手順は割愛しますが、ざっくり言うと多数決(のようなもの)を最大で二回実施し、最多得票者が逮捕されます。逮捕された人がインサイダーだった場合は庶民チームの勝ち。庶民が逮捕されてしまった場合は、インサイダーが逃げ切ったことになりインサイダーの勝ちとなります。

 以下、私のインサイダー・ゲーム経験談。

・このゲームを知って間もない頃、庶民の時に正解を言い当てるのが早すぎて、誰がインサイダーなのかわからず詰んでしまうことがありました。時間に余裕がある時は、インサイダーを炙り出すために沈黙する必要があると学びました。

・逆に、インサイダーの時に庶民のふりをして「正解に心当たりがあるけど、インサイダーを炙り出すためにしばらく黙ります」と発言するのは有力な戦法のようで、これで数回勝利しました。後半の話し合いの時に「どうして正解わかったの?」と聞かれることになるので、その質問への返答を用意しておく必要はありますが。

・時間に余裕がなくなるお題も多数あります。例えば「お母さん」や「弁護士」がお題の時は、「生き物ですか?」というありがちな質問に対して「はい」なのに、動物の種類を絞り込もうとするとおかしなことになっていきますので、インサイダーがさりげなく誘導する必要があります。

・的外れな質問をする人は庶民であることが多いようです。例えば、お題が「国境」の時に「金属製ですか?」「プラスチック製ですか?」と素材について執拗に確認する人は、正解を知らないからこそこういう質問をするのだ、と推理できます。ただ、その推理を逆手にとってわざと的外れな質問をするインサイダーも時々いますが。

・マスターを困らせる質問をする人も、庶民であることが多いと思います。お題が「駐車場」の時に「建物ですか?」と質問すると、マスターは「普通なら『いいえ』だけど、立体駐車場のことも考えると『どちらとも言えない』になるのか……?」と自問することになり、時間を食ってしまいます。インサイダーがわざわざそんなことをするメリットはないだろうから、きっと庶民だ、と推理できますが、これもまた逆手にとる人がいるかもしれない。

・難度が高いお題の時に、ゲームに不慣れな人がインサイダーになってしまうと、うまく誘導できず前半でゲームオーバーになりがちです。逆に、うまくいった場合は「手慣れているインサイダーが誘導したに違いない」と推測できます。例えば、お題が「文化」なのに正解できた時とか。

・インサイダーの立場で難しい局面のひとつは「マスターが応答を誤った時」です。お題が「手」の時に「生き物ですか?」という質問にマスターが「はい」と答えたため、庶民は全員「なるほど、では動物の種類を特定しよう」という思考になり、インサイダーだけが焦る展開になりました。動物ではないんだよ、と誘導するために「それは動物の名前ですか?」と質問して「いいえ」の回答を引き出し、何とか事なきを得ました。生き物の身体の一部というところまで誘導できれば満点でしたが、そこは庶民の人たちが自力でたどり着いてくれたので運もよかったです。たどり着いた人にインサイダー容疑を着せて勝てました。

 推理するのが好きな人、あるいは、推理してるふりをするのが好きな人にお薦めのゲームです。私はどちらも好きです。

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