ドラゴンえもん ノヴィタと夢の国大炎上

美月真雲

 つかもうぜ! 地球〇壊爆弾
 世界でいっとー スリルな兵器
 さがそうぜ! もし〇ボックス
 世界でいっとー ユカイな電話
 この世は でっかいどこで〇ドア
 そうさ今こそ タケコプタ〇!
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 攻撃はあっけなく成功し、夢の国は炎上した。
 四次元ドラゴンであるドラゴンえもんは空を舞いながら、次々と口からエネルギー弾を吐き、夢の国に存在するアトラクション、ショップ、レストラン、その他のあらゆる建造物を蹂躙した。戦闘力は53万を軽く超える。ドラゴンえもんを止める者は誰もいない。
 ドラゴンえもんの背には眼鏡の少年が跨がっている。彼の名はノヴィタ。射撃手として宇宙最高峰の腕前を誇る天才小学生である。手には光線銃。いつでも撃てるように備えつつ、警戒の目を光らせ、現れるはずの敵の姿を探す。
 ノヴィタは夢の国に対して並々ならぬ憎悪を抱いていた。男女交際をしている人々が毎日毎夜集まっていちゃいちゃしているのは許せん。スネイオという同級生の影響で、ノヴィタは他人が自分を抜きにして楽しんでいるという事実に人一倍敏感だった。その上、何だ。千葉のくせに東京を僭称しているのか。滅さなくてはならない。
 先日、ノヴィタが七つの宝珠を集めると、机の引き出しからドラゴンえもんが現れ、願いを聞いてきた。夢の国の破壊を願うと、ドラゴンえもんは躊躇した様子を見せた。ドラゴンえもんはノヴィタの志には同意してくれたが、なぜかネズミを苦手としているらしく、夢の国へは近づきたくないと言う。ノヴィタは「ネズミなら僕が撃ち殺してやる」と応じ、ドラゴンえもんを説得し、そして今に至る。
 そう。本来ならあのネズミが現れるはずなのだ。奴が夢の国のこの惨状を放置しておくはずがない。
 ドラゴンえもんによる破壊が続いていて、煙と炎が立ち上り、大音声が鳴り続けるこの空間においても、ノヴィタの神経は研ぎ澄まされていた。半径五百メートル以内で自分たちに殺気が向ける者がいれば、確実に気配を察知できる自信がある。
 おそらく、あのネズミは死角からしっぽを狙ってくる。ドラゴンえもんの弱点がしっぽであることはよく知られている。しっぽを引っ張られると気を失ってしまうのだ。だが、近づかれる前に撃ち殺せばいい。ノヴィタの射撃の腕があれば容易なことだ。

「そろそろ気が済んだか?」

 意外なことに、後ろから、それも自分たちよりも上の位置から声をかけられた。あの有名な、耳障りなネズミの声。
 敵が後ろにいること自体は予想できたことだが、ノヴィタは内心驚いていた。
 奇襲してくるものと思っていたが、わざわざ声をかけてきたのは何が狙いだ?
 ここは空中だが、どうやってさらに上の高度に滞空している?
 と、数瞬のうちに脳裏に思考が駆け巡ったが、ノヴィタはそれらを自ら打ち消すように、振り向き、仰ぎ見てすぐさま発砲した。敵の狙いなど撃ってから考えればいい。
 だが、撃った直後にノヴィタは違和感を覚えた。声の主の気配ははるか遠く、光線銃の射程範囲外だ。そして、どうしたことか、ノヴィタの感覚をもってしても位置がつかめない。声が反響しているせいで正確な方角がわからなかった。
「お前の銃は俺には当たらんよ」
「……それはどうかな」
 ノヴィタはドラゴンえもんの四次元鱗の隙間から道具を取り出した。狙撃銃と、索敵用のステッキだ。このステッキは目当ての人物の方向に倒れる性質をもつ。ノヴィタはドラゴンえもんに乗ったまま、地面にステッキを投げつけた。すると奇妙なことにステッキは地面に直立した。投擲が強すぎて地面に刺さったのではない。ステッキの特性による直立だ。
「ということは、真上か!」
 ノヴィタはドラゴンえもんに方向転換を促し、さらなる上空に向けて飛翔させた。そして自らは銃を構える。敵の姿が見えたら即座に撃つ。真上の敵に狙いを定めるのは初めて経験だが、決して不可能ではない。天才小学生は頭の中で重力や風の影響を計算し始める。
 ネズミの声は、呆れたように言う。
「当たらねえよ。というか、当たったところで無駄だ」
「僕の射撃の腕を甘く見るなよ?」
「射撃の腕の問題じゃなくてだな、お前たちは既に夢の国の術中にはまっている」
「……なに?」
 ようやく、ノヴィタの感覚が相手の気配を突き止めたが、驚くべきことに敵は体感で上空1キロメートル以上のところから声をかけてきている。それも、滞空しているわけではない。空に、途轍もなく巨大な円が三つ重なったような頭部のシルエット。
「巨大化しているのか!」
「違うぞ。お前たちが小さくなっているだけだ」
「なん……だと……?」
 ノヴィタはビッ〇ライトやスモー〇ライトの存在を知っているが、それはドラゴンえもんの専売特許だったはずだ。
「夢の国のネズミごときが、物質縮小化の能力を身につけただと⁉ そんなバカな話があるか……!」
「俺の能力じゃない。夢の国の力だ」

《無限周遊極小世界(ザッツ・ア・スモールワールド)》

 夢の国に害する敵を察知すると自動的に発動し、対象者を夢の国にそっくりな《極小世界》に封印する。《極小世界》の直径は1ミリメートル程度。ノヴィタとドラゴンえもんはその中の世界を破壊していただけで、現実の夢の国には影響が一切ない。
 昔から存在するアトラクションだが、この力は201X年のリニューアルオープンによって新たに発現したものだ。実際に発動したのはこれが初めてのことである。
「夢の国への害意が消えたなら、その世界から出られるぞ」
「……僕たちを生かしておくつもりなのか?」
「俺たちが敵を殺すとでも思っていたのか? 改心して、入園料を払って遊びにきてくれるなら、俺たちは誰だって歓迎する」
「それは寛容なことだな……」
 ノヴィタはまだ諦めていない。ドラゴンえもんの鱗の間からビッ○ライトを取り出し、自分の身体に光を当てた。こうすればいずれ《極小世界》よりも大きくなって、ネズミに攻撃が届くはずだ。
 だが、天才小学生ノヴィタは珍しく失敗した。ノヴィタだけが大きくなってしまい、ドラゴンえもんがノヴィタの重さを支えられなくなる。バランスを崩し空中に投げ出され、ノヴィタは慌てて手を伸ばしてドラゴンえもんを掴むが、そこはしっぽだった。ドラゴンえもんは気を失い、ノヴィタは青ざめて落下した。幸い、ドラゴンえもんの身体がクッションとなりノヴィタの命に別状はないが、衝撃でビッ〇ライトは壊れてしまった。
「くそっ!」
「残念だったな。気を鎮めて、《極小世界》の効力が解けるのを待つことだ」
「やだね。僕の憎しみを甘く見るな。せめて、東京を僭称するのをやめるなら考えてやる。千葉なら誇りをもって千葉と名乗れ」
「そこは許してくれよ。ニズデーランド・パリがニズデーランド・マルヌ・ラ・ヴァレって名乗ってもピンとこないだろ? それと同じだ」
「いいや、僕は許さない」
 ノヴィタは意地を張った。意地を張り続けて一年経ち、二年経ち、ついに十年経った。天才小学生も今やひげもじゃになってしまったが、でぇじょうぶだ、タイムふろ○きでやり直せる。
 めでたし、めでたし。

※この作品は実在のアレとかコレとかとは一切関係がありません。
※《無限周遊極小世界》の余波で原稿用紙が小さくなってしまったので、エンディングの歌は割愛します。

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