しっぽの たね

かみたか さち

 りっくんがかよう おひさまようちえんでは いつも はるに ひまわりのたねをうえます。
 きょうは たねをうえるひ。りっくんたち ひなぎくくみのみんなは そとであそんだあと、ひろみせんせいのところに あつまりました。
 りっくんは だいすきな ゆうたくんのとなりにすわりたかったのですが ゆりなちゃんがさきに ゆうたくんのとなりに すわってしまいました。ゆうたくんはにんきものなので りっくんは なかなかいっしょにあそぶことができません。
 ひろみせんせいが みずいろのえぷろんのぽけっとから ちいさなふうとうをだしました。
「ここにはいっているのが ひまわりのたねですよ」
 ふうとうをみたひろみせんせいが、あら、といいました。
「ごめんね。せんせい、まちがっちゃったみたい」
「それは なにのたねなの?」
 ゆうたくんが ききました。
 ひろみせんせいは、ふうとうのおもてをみて めを まんまるにしました。
「しっぽのたね ってかいてある」
「しっぽ? しっぽって どんな はななの?」
 みんなは、わいわいと ひろみせんせいのまわりで しつもんをはじめました。
 おおさわぎになったので えんちょうせんせいが ようすをみに でてきました。
「しっぽのたね だって?」
 えんちょうせんせいのひげが ぴりぴりとふるえました。
「ふむふむ、なになに? そだてかた。まず たねをおしりのうえのほうに てーぷではります。そうして いっしゅうかんほどで しっぽがそだちます だって?」
 えんちょうせんせいが ふうとうをあけました。てのひらに なかみをだしました。りっくんは せんせいのちかくにいたので たねをみることができました。
 ひまわりとおなじような ほそながい たねでした。おなじような くろとしろの しまもようがありました。
「ふーむふむ」
 えんちょうせんせいは ひげをなでながら ぽけっとから もうひとつ ふうとうをだしました。
「まずは ひまわりをうえよう」
 あたらしいふうとうには きいろいひまわりのえが かいてありました。
 みんなで うえきばちに みっつずつ たねをうえました。
 いちばんさきにできたゆうたくんが おおきなこえでいいました。
「ひろみせんせい。しっぽのたねも うえたい」
「ぼくも」
「みぃちゃんも」
 みんなつぎつぎに どろだらけのてをあげました。
 ひろみせんせいは こまったかおで えんちょうせんせいに なにかそうだんしました。そして にっこりと みんなにいいました。
「じゃあ、ひまわりにおみずをあげたひとから じゅんばんに てをあらって ここにならんで」
 りっくんもいそいで てをあらって れつにならびました。
 ひろみせんせいと えんちょうせんせいが じゅんばんに たねをおしりにはってくれました。

 そうして いっしゅうかんがすぎました。

「みてみて。きつねだよ」
「これ、なにかな。うさぎ?」
 ひなぎくくみは あさからにぎやかでした。みんな はえてきたしっぽを みせあっていました。
「ゆうたくんのしっぽ、かわいい! いぬだね」
 だれかがいいました。りっくんがみると ゆうたくんのずぼんからは くるんとまいた かわいいいぬのしっぽが はみだして ぶんぶんふられていました。
 みんながうれしそうにしているなかで りっくんは ずぼんのうしろをおさえました。
「りっくんは?」
 ゆりなちゃんが すかーとのすそから ちゃいろのしまもようの ねこのしっぽをゆらしながら きいてきました。
「ぼく」
 もじもじとさがったら つくえにぶつかりました。そのひょうしに ずぼんから くるんとながいしっぽが でてしまいました。
 ゆりなちゃんが ひめいをあげて とびのきました。
「なにこれ。とかげ? きもちわるい」
 りっくんは なきそうになるのをがまんして じっとうつむきました。ほかのみんなは ふさふさのしっぽです。 ちいさなうろこがびっしりついたしっぽは りっくんだけでした。
 だけどそのとき ゆうたくんが めをきらきらさせて いいました。
「うわー。りっくんのしっぽ いいな。かっこいい!」
「そ、そう?」
「きょうりゅうみたい。ぼくも そんなしっぽがよかったなぁ」
 ゆうたくんにつづいて なんにんかのひとが うなずきました。りんかちゃんは、りっくんのしっぽをさわって
「ざらざらしてる」
と よろこんでいました。
 りっくんは やっとあんしんしました。
 それからしばらく ひなぎくくみのみんなには しっぽがついていました。すわったり きがえたりするとき、ちょっぴりじゃまでしたが どれだけじょうずにしっぽをふれるか きょうそうしたり しっぽでそうじをしたりと たのしくすごしました。

 ひまわりがおおきくなって たねをつけはじめたころ。しっぽは だんだんかれて とれてしまいました。
「ひろみせんせー。しっぽのたね もうないの?」
 きかれて ひろみせんせいも ざんねんそうなかおをしました。
「ひなぎくくみの みんなのぶんしか なかったんだよ。せんせいも うえてみたかったなぁ」
「ひまわりみたいに つぎのたね、できなかったもんね」
「でも たのしかったね」
 みんな かおをみあわせて ざんねんそうだけど うれしそうにわらいました。
 りっくんも みんなとおなじようにわらって そっと ぽけっとへ てをいれました。
 ぽけっとのなかに、ほそながい くろとしろのしまもようのたねが ありました。
 りっくんのとかげのしっぽは かれるまえに さきっぽがひびわれました。そのなかに このたねがひとつぶ ささっていたのです。
 みんなのしっぽも そうだとおもったけれど どうも たねをつけたのは りっくんのしっぽだけのようです。
 このことは ないしょにしておこう。
 りっくんはそうきめて おむかえにきたおとうさんのくるまのまどから そっとたねをすてました。

 りっくんがしょうがくせいになってから。
 たねをすてたあたりに まいとしたくさんの ひまわりのたねのようなものが ちらばるようになりました。
「このへんに ひまわりなんて さいてなかったのにね」
「うえても めがでないし」
「はむすたーにあげても たべないの」
「なんだろうね、これ」
 だれも これがしっぽのたねだとは きがつきませんでした。

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