それ逝け! 残飯マン 『残飯マンとキツミーマウス』

美月真雲

「残飯マン! 新しい残飯(かお)よ!」
 タバコさんの遠投により、再び残飯マンが力を取り戻した。これで六度目だ。キツミーマウスが残飯マンに決定的なダメージを負わせる度に、これが繰り返される。
「ゲンキィ……ヒャクバイィ……、残飯マン……!」
 顔の位置を手で微調整しつつ、キツミーマウスを見据える残飯マン。その目は妖しく光り、尋常でない圧迫感を放っている。地獄の悪鬼か、亡霊か、いずれにせよ、この世の者ではない何かと相対しているような感覚がキツミーにはあった。
 残飯マンのマントが風を受け翻る。自由自在に宙を舞い、勢いをつけて残パンチを繰り出してくる。だが、キツミーは完全に見切っている。残パンチをかわし、すれ違いざまにカウンターの拳を残飯マンの顔面に叩き込んだ。頭部が潰れて見る影もない。だが、これは既に六回やったことだ。また復活してくるだろう。
 当然、キツミーは、新しい残飯が投げ込まれる前にタバコさんを何とかすれば良い、ということには気づいていた。だが同時に、それを実行すると今以上に不味い事態に陥るという未来も感じていた。
《キツミーの好感度が急転直下のごとく落ちてしまう》
 ……好感度? 誰からの好感度だ? なぜ今そんなことを気にする必要がある? そんな自問をしつつも、キツミーはタバコさんに対して手出しできずにいた。
 予感よりも強い、神の啓示のような感覚。
 残飯マンとの戦闘以外の手段では、この事態は終わらない。
 もっと言えば、残飯マンが勝利するまで、キツミーは戦い続けなければならない。
 誰が宣言したわけでもないのだが、この場においては、残飯マンが物語の主人公として決定づけられている。「番組」は残飯マンの勝利によって締めくくられる。決して逆らうことのできない「脚本」や「暗黙の了解」の存在を、キツミーは感じ取っていた。
 ニズデーリゾートを守護するためには、ここで敗北するわけにはいかないのだが、これは残飯マンの「番組」なのだ。「番組」が始まった時点で、残飯マンの勝利は決定している。
「……そうか」
 キツミーマウスは、一言呟いた。そして、残飯マンが復活するまでの時間を利用し、一度その場を離れた。
 果たしてキツミーの、そしてニズデーリゾートの命運やいかに……?
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「残飯マン・デス……!」「加齢パンマン」「無職パンマン……」「王むすびまん」「皇むすびまん!」「邪夢王子さんです」「ぼく、バカお! バカおですよバカお!!」
「君は?」
 残飯フレンド(仮)!「せやなかたし」で検索、検索ぅ!
 土勤フレンド(仮)も遂に出た!
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「ゲンキィ……ヒャクバイィ……、残飯マン……!」
 七度目の復活を果たした残飯マンは、消えたキツミーを探した。その過程で、園内のゴミ箱を見た。食べかけで捨てられたクレープの存在を確認し、残飯マンは涙する。
「残さずゥ……食べなよォ……」
 残飯マンは残飯の哀しみを背負って戦う。飽食の時代。多くの家庭で、飲食店で、スーパーやコンビニで、毎日食べ物が大量に廃棄されている。その事実に残飯マンは人一倍敏感だった。
 ここニズデーリゾートでも、レストランやワゴンで料理と菓子が提供され、そのうちのいくらかが残飯となる。毎日約十万人分の膨大な残飯。物言わぬ彼らの無念の感情をその身に受けて、残パンチの威力はさらに増す。
「見つけたァ……」
 キツミーマウスはビックリサンマー・マウンテンの岩場にいた。ゲストが立ち入れない領域にいるが、それ以上に逃げ隠れする様子はない。むしろ見晴らしは良好。自分はここにいるぞと言わんばかりの堂々とした態度だった。キツミーも残飯マンの姿を認め、拳を握り戦闘態勢を作っている。
 残飯マンは宙を旋回し、キツミーマウスに七度目の残パンチを浴びせにかかる。
 だがその時、空に見慣れた、しかし今日初めて見る物が見えて、困惑した。
「は、配膳マンがァ、なぜここにィ……!?」
 配膳マンの飛空挺だった。金属のアームを伸ばして、残飯マンに攻撃を仕掛けてくる。
 回避するのはわけもない。毎週やっていることだ。だが、なぜ今、という疑問が残飯マンの中で沸き起こる。
「は・は・はッー! キツミー氏と戦って疲労している残飯マンなら倒せるぞー!」
「舐めェ……るなァ!」
 残パンチを叩き込むと、配膳マンはあっけなく吹っ飛んでいった。いつものように「敗敗戦(はいはいせーん)!」と叫んで、空の彼方に消えた。
 それにしても、なぜ今、配膳マンがここに現れた?
「俺が呼んだんだ。『番組』を終わらせるためにな」
 残飯マンの心を読んだかのように、キツミーが疑問に答えた。
「今の残パンチでお前は『勝利』した。『番組』の締めに相応しい『勝利』だったぞ」
「君はァ……何を言ってるゥ……?」
「お前の『番組』は終わったということだ。ここからは新番組だ」
 キツミーが拳を握ったまま指を鳴らす。
 そして、残飯マンは今さらながらに気づく。タバコさんが乗る残飯マン号が追いついて来ていないことに。残飯マン号は、ニズデーの手の者に足止めされたのだ。

 その後、キツミーは、残飯マンに八度目の勝利を収めた。残飯マン号も追い返したので、残飯マンは復活しなかった。
 ……その日のうちは、だが。
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「君は?」
 キツミーフレンド(仮)!「ニズデー」で検索、検索ぅ!
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 夕方になったので、弟子たちはイエヌのところに来て言った。
「時刻ももう回っています。群衆を解散させてください。そして、園外で食事をとるようにさせてください」
 しかし、イエヌは言われた。
「園外で食事をさせる必要はありません。あなたがたで、あの人たちに何か食べる物を上げなさい」
 弟子たちはイエヌに言った。
「ここに食物らしきものは、気絶している残飯マン一人しかありません」
 すると、イエヌは言われた。
「それを、ここに持って来なさい」
 そしてイエヌは弟子たちをすわらせ、残飯マンに手を当て、天を見上げて、彼を祝福し、裂いて弟子たちに与えられたので、弟子たちは群衆に配った。
 人々はみな、食べて満腹した。そして、その食べ残しを取り集めると、十二人の残飯マンになった。
 残飯マンの戦いは、まだ始まったばかりだ。
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(お詫び)
十二弟子フレンド(仮)、預言者フレンド(仮)は諸事情により、リリース延期となりました。ご迷惑をおかけし申し訳ございません。
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※この作品は実在のアレとかコレとかとは一切関係ありません。

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